
テレフォン -約束-
第4章 シゴト
・・・・次の日、アタシは、ちゃんと出勤しました
昨夜のボーイさんは笑顔で「おはよう」と挨拶してくれました
「辞めちゃうかと思ったよ」とアタシの頭に、その手の平を優しく置きました
アタシは、昨夜に家で泣いて腫らした目だけど、笑顔で応えました
源流は他の嬢と同じでも“簡単な覚悟で入った世界じゃない”のです
だから、アタシは、負けまい負けまいと、その日は終始笑顔で過ごしたっけ・・・・
・・・・そんなことを思い出しながら
“ヤマダ”さんの背中をお見送りした後の帰り道
辿り着いた“せせこま狭い嬢の部屋”で一息つく間もなく
「レナちゃん、ご指名が入りました」と告げられました
幾何学模様の羽根は、もぎ取られたままの蝶だけど
“蜜”を捜し当てるまでは
アタシは、この世界を辞めたところで、飛べないままの蝶なのです
だから、アタシは
“シン”の無音の中
アタシは、「はい」と返事をして背筋を伸ばしました
