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テレフォン -約束-

第5章 原色の気球と花束と




由井さんのアタシへの“恋風”は、季節外れの“爽やかなそよ風”のように心地よくアタシを包み、緩やかに時間が過ぎてゆきました

由井さんは少しだけ酔ったのか

「今日はお酒が美味しいなぁ~」って、焼酎を呑みながらカウンターテーブルの下で

誰からも見えないようにアタシの手を“ギュッ”と突然に握りました

由井さんの手はお店で感じた時よりも

暖かく優しくて
硬く大きくて
突然の大胆さに

アタシはその手で、普通の女のコに一瞬で引き戻されてしまうような錯覚を覚えながら


アタシが鈍く弱く握り返してみると


素早く強く“ギュッ”と由井さんの手に再び力を込められた一瞬で惹き付けられてしまい

おでんの味も
ドレッシーな姿も
2つの予感も


そんなことを忘れてしまい鼓動が“ドキドキ”としました


そして、ココロの中の孤独なピンホールが埋められてゆきながら、今夜、この人に

“アタシがシゴトで譲らない魂”の湿地を

埋られる3つ目の予感がした時

アタシは完全に“りお”に戻り、テーブルに目を落とし赤面することだけしか出来ませんでした



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