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テレフォン -約束-

第5章 原色の気球と花束と




夏の海風に流されて、ホテルの部屋の窓ガラスに斜に叩きつける雨の向こう側

水彩画が滲んで消えてゆきそうな100万ドルの夜景

いつか誰かと見に行った科学館のプラネタリウムより綺麗な静止画

遠く見える貨物船の群れの赤い光と高層マンションの屋上のライティングに視点を合わせていたアタシ

アナタはそんなアタシの背中を抱きしめながら

アタシの濡れて乾ききれない髪の香りを嗅ぎながら

“クリスマスイブを一緒に過ごそう”と言ってくれました


やっぱり、アナタは真夏にトナカイを連れているサンタさんみたいでおかしいけれど


・・・・でも


“アナタと過ごしたいな…”


いつもの通勤の地下鉄みたいな近未来の先のような“約束”だけど、アナタと一緒に過ごしたいな


・・・・ねぇ、ねぇ、


それって、ちゃんと“約束”してくれますか?


背中で髪の香りを嗅いでる


アナタに聞きました


アタシは“約束”を破る人が嫌いです


・・・・でも


あの“約束”を破ったアタシはもっと嫌いなのです


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