テレフォン -約束-
第6章 灰色の記憶
・・・・まるで、嘘みたいに優しい背中の抱擁
・・・・まるで、夢みたいな安らぎの中のココロ
アタシは抱きすくめられると弱いのです
斜に降る雨が注がれて、干からびたハズのココロが潤いそうな錯覚を覚えるからです
アタシはそんな心地よいハズの夜景を見ながら
やっぱり、思い出してしまいました
・・・・・・・・小さい頃は、とりあえずお父さんが不在でした
幼稚園の時、お母さんはいつも忙しくてお迎えが遅れてた
いつも最後まで迎えに来てもらえず、先生と遊具で遊びながら待っていました
「もうすぐお母さん来るからね」
優しく顔を覗き込む先生
もうすぐ…
もうすぐ…
・・・・でも
もう迎えに来ないんじゃないか?と、不安だった
いつも…
いつも…
「明日は早く迎えに来てね」と、ようやく来たお母さんに“約束”をしたけれど
お母さんは多分、困った顔をしていたように思います
その、一方通行の“約束”になんて返事はありませんでした
当たり前の“約束”に笑顔で応えてくれるような
そんな、お母さんではありませんでした
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