テキストサイズ

テレフォン -約束-

第7章 極彩色の万華鏡




〈揺れる揺れる電車〉

無言劇を演じているような2人でした
アナタは左手側の車窓の向こうの雨雲が掛かる山並みを眺めていました

年が明けて直ぐにアナタは耐えられない拷問から逃れるように退職届を出して部屋を解約をしました

描いた人生の青写真や設計図が崩れてしまい、激流のような不安を紛れさす為にモノやヒトに八つ当たりすることの知らない性格のアナタは、落胆や重圧をポリ袋に入れて“月”“木”の燃えないゴミの日に出すような小細工ができるような余裕がありませんでした


弾きだした計算や予想図が誤算と誤差を表す中で、仮病をつかって一息をつくのにズルもウソもつけない真っ直ぐな性格のアナタは、唇を真一文字にして仏頂面でふて腐れて、クボミのエクボはすっかり更地に造成されてしまっていました


そんな、アナタの横顔は大手メーカー勤務だったハシクレもハシキレもなく、魂の抜けた脱け殻のようで、その雨雲にすら焦点が合っていないように見えました


ストーリーメニュー

TOPTOPへ