
テレフォン -約束-
第7章 極彩色の万華鏡
〈叩く叩く雨の飛行場〉
廻廊西側の長いエスカレーターを上がり…
発着ロビーのベンチに腰を掛けて並んで手を繋いで搭乗までのカウントダウンを刻んでいました
互いの絡み合わせる指には、焦げる匂いがするほどに熱を帯びているけど、絡みついていた赤い糸は色褪せてゆくように想えました
そんな、アナタはそれを認めたくないように苦悶の表情のまま、哀調を帯びた声で
“田舎の空気は澄んで綺麗で”
“魚や野菜は新鮮で美味しくて”
“小鳥の鳴き声が空に突き抜けて”
“見たことのない蝶々が飛んでいて”
「りお、いいとこだよ?」
「りお、必ず、おいでよ?」
って、何度もリピートして
南から太陽が昇るような…
時差があるように感じる…
その最果ての故郷に、それでもアタシを導いてくれようと一生懸命に一生懸命に話してくれました
最後に発したアナタのその悲壮感を帯びた祈りのようなリピートは…
事務的な場内アナウンスで冴え渡るロビーの高い天井の吹き抜けに物悲しく…
かき消されたのでした
