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時計じかけのアンブレラ

第4章 それから

結局、俺は智君の願いを受け入れた。
表面上だけね。

言ったら開き直ったというか。
やけくそ、だったのかもしれないけど(笑)。

唇を震わせて、上目遣いに俺を見てたあの人が。
大きな悲しみを押し殺して、自分の中で決めた何かを貫こうとしてるのがわかって。

ここで俺が揺らいでどうする、と思った。

貴方が頑固な事なんて、とっくの昔から知ってる。
常に自分のことを後回しにすることも。

何よりも一番、人に迷惑をかけないように、って考えることも。



共に苦しむことが許されないのならば、どこまでも寄り添って見つめ続けるだけのことだ。

貴方の隣に立つのは俺。
そこは俺の場所だって決まってんだよ。

怒りにも似た熱量で、俺はあの時そう思った。

恋人だろうが、パートナーだろうが。
メンバーだろうが。
誰に何と言われようと、俺には確信がある。
俺とあの人との絆は、そんなにヤワなもんじゃない。

だから今まで通り、俺があの人を大事に慈しんで生きてくことに、なんの違いもない。

そう、腹を括った。



それから。
あの人の家に泊まりに行ったり、あの人が俺の部屋に来ることはなかったけれど。
俺はただ、あの人をこれまで通り愛し続けた。

その間、俺があの人を見守るように、メンバーが俺達二人を見守ってくれた。

誰も、俺たち二人のことについては、口を出さなかった。


















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