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時計じかけのアンブレラ

第4章 それから

収録の後、メンバーは気を遣ってくれたんだろう。
俺と智君を残して異様に早く楽屋をあとにした。

普段なら一番早く楽屋を出て行く貴方が、着替えが終わってからもぼんやりとしたまま動かないから。
俺は思い切って声を掛けた。

「今日、ウチに来ない?」

断られるのを覚悟で言ったのに、智君からは心配そうな声で、いいの?と返事があって。
俺が貴方のことを断る事なんて、あるわけないのに。
そう思ったら愛しくて笑みがこぼれた。

その夜は、二人で俺の部屋に戻って。
久しぶりに、お互いの隙間を埋め合った。

何度も何度も口づけを交わす間。
智君は恥ずかしそうに笑いながら、時々顔をくしゃくしゃにして涙を零して。
どうして泣くの?と俺が訊いたら、嬉しいんだよ、って。

「しょおくんが居てくれて、嬉しいんだよ…」

何がきっかけで俺を受け入れてくれたのかは解らないままだったけど。
あまりにも可愛くて、愛おしくて。
俺までつられて泣きそうになった。

ポロポロと落ちてくる涙をキスで拭ってやりながら。
俺は改めて、あの人に約束した。

「俺はずっと貴方の傍にいるよ」

ちゅっ、と吸い取って。

「貴方に俺が必要なくなるまで
どんな時も貴方の傍にいる」

だって、俺には貴方が必要だから。
しっかり目を見つめて言ったら、智君はまた泣いた。

その姿を見たら抑えてた熱を止められなくなって。
もう無理、って譫言みたいに訴えてくるのを、マダダメって。

ひたすら優しくしたいと思っているのに、終いには、愛しているんだか責めているんだか自分でもわからなくなる程に、ただ温めてた。



翌朝。
開かない目蓋と戦いながらコーヒーを啜っていた時に、貴方がポツリと言った。

「しょおくんは傘みたい…」

回らない頭で、今何て?って言われたことを少し考えて、俺は突然思い出した。

「………あっ!!
貴方、松本に傘、プレゼントしたでしょ?
俺も欲しい」

ゆっくりした瞬きを何度も繰り返しながら、寝ぼけ眼の智君が俺をぼーっと見てた。
しばらく考えるような間があって。

「ああ…それでなんだ…
いいよ、買ってあげる
キレイな空色の、青い傘ね…」

全然目が覚めてない顔で、むにゃむにゃ言って。
ふにゃっ、と笑った。



智君。
俺はどんな時も、ずっと貴方の傍にいる。






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