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時計じかけのアンブレラ

第1章 青江さんと緑の紙

「そっか…
青い傘の青江さんだ
覚えやすいね(笑)」

オイラが笑いかけると、青江さんも嬉しそうに笑い返してくれる。
スーツに青と赤のコンビのネクタイがカッコイイ。

「智君、学校はどう?
バドミントン部だったよね?」

夕日に染まった青江さんが、柔らかくきいてくる。
オイラ、この人にバド部だって言ったっけ?
ま、いっか?

「オイラねぇ、部活やめたの
なんか熱血な感じが合わなくって…
俺、そういうの、あんま好きじゃないんだ」

「ああ…そうだよねぇ…」

青江さんは、良くわかる、って感じにウンウンと頷いた。

オイラは真面目にやってるつもりなんだけど、どうも周りから見るとヤル気があるようには見えないみたいで。
いっつも怒られてる。

「なんか大会の前とかピリピリするから
俺だけ浮いてるような気がして…
オイラみたいのが居たら
真面目にやってる人に悪いじゃん?」

実は最近、部活のことが結構気になってたから、思わず本心を吐き出してしまった。

「中学の部活って強制的に入らないといけないからさ
やめます、って言ってもオイラの籍が残ってて
実際にはサボってるのと変わりないんだ

なんであの人練習に来ないの?
って目で見られてるのは感じるし
試合には出ろ、って言われる
でも…
ポッと行って試合だけ出てたら、ちゃんと練習してる人達に悪いよ…」

視線を合わせないようにしてブツブツと言う間、青江さんは石を投げる手を止めて、オイラの話を黙って聞いていた。

「だから寄り道してたの?」

優しい話し方に何となく涙が出そうになって、ウン、て頷く。

「早く帰ると母ちゃんに心配かけるから」

「そうか…智君はお母さん思いだもんな…
中学生にとっては部活って大きいよね
悩んでたんだね…」

大きな手がオイラの頭に乗って、小さな子にするみたいにポンポンてした。
それが優しくて。
解かってくれる大人が居て、泣きそうになった。

「智君
きっともうすぐ、思いがけないことがあるよ?」

「え?」

「最初は嫌だな、って思うかもしれないけど
貴方には踊りの才能があるから…
お母さんから話があったら遊びのつもりで行ってみ?
きっと夢中になるよ」

青江さんが意味のわからないことを言った。

しばらく石投げをしてから、じゃあね、と別れて家に帰ると、緑の紙が入った封筒が届いていた。









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