テキストサイズ

時計じかけのアンブレラ

第2章 ハワイ

バッチリ二重で、笑った時に目尻に寄る皺も優し気だし。
青江さんが実はすごくハンサムな人だと気づいて、オイラはちょっと見惚れてしまった。

「どうしたの?
せっかく会えたんだから、そんなに警戒しないで」

心配そうに言われて、オイラは慌てて首を振る。

男が男を見てポ~ッとするなんて変だけど。

何しろ男ばっかりの芸能事務所で、やっぱり先輩とかを見てても、かっこいいなぁ、って憧れたりするし。
へ、変な意味じゃないから。

「青江さんて、すごいカッコいい人だったんだな、
って思って(笑)」

心の中で言い訳しながら言ったら、恥ずかしくなってきた。
下を向いた俺に青江さんがダハッって笑う。

あ、この笑い方、翔君に似てる。
そう思って顔を上げる。
改めて見ると、青江さんのルックスはウチの翔君にとても良く似ていた。

「え?親戚?」

「ん?」

「青江さん、ウチの翔君にそっくり
もしかして親戚の人?ですか?」

質問したら、青江さんは頬杖をついた手で口元を隠すようにして。
瞳だけで楽しそうに笑った。

「違うの?」

「親戚ではないね」

「ふうん、そっか
ま、いいや」

「いいんだ?」

「うん、オイラ青江さんのこと好きだから別にいい」

照れ隠しに、えへへ、と笑ってごまかしたら。
青江さんは何とも言えない表情をした。

泣きそうにも、嬉しそうにも見える。

「俺も、貴方のことが大好きだよ」

そう言って頬杖していた手を顔から外すと、ニッコリと微笑んだ。

「智君、
これから先、貴方は普通の人の何万倍も愛されて
そして妬まれ、憎まれるかもしれない」

「え?」

「どんな時にも、決して
ポジティブな可能性に背を向けないで
今日一緒に新たな人生をスタートするメンバーを
どうか信じてください
何があっても、俺が、必ず貴方をフォローする」

どういう意味か訊き返そうとしたんだけど。
青江さんが、あまりにも真剣だったから言葉が出て来なかった。

びっくりして、ただ彼のことを見つめていたら、突然に日本語で名前を呼ばれた。
スタッフだ。

「休憩時間が終わるんじゃない?
みんな待ってる
行った方がいいよ」

青江さんが、さっきまでとは違って優しい声で言った。
それで、じゃあね、と言って別れた。

次に会えたら、緑の紙のことをきこうと思ってたのに。

忘れた。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ