無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

家でひとりで過ごしていても落ち着かない

結局、開場時間よりも早くライブ会場へ戻った

既に会場周りには沢山の人

ライブグッズを買い求める人たちも列を作っている

俺も買ってみようかな…
今までアーティストのファンになった事がないから、ライブ会場でグッズを買うなんて事をした事もない

今日はとことんファンの気持ちに浸ってみよう

最後尾に並んでみる

女性ファンが多いかと思いきや、男性ファンもそこそこいる事に嬉しくなる

俺がここにいる事も不自然じゃないし…

ペンライトとタオルとパーカー…それにポスターまで購入してしまった

智の部屋に貼ったら、流石に嫌がられるかな…そんな事を考えてたら声を掛けられた

「櫻井くん？どうしたの？ひとりでニヤけて」

視線を上げると、松本さんの姿が…

「松本さん、なんでここに？」

「ん？息抜き。それよりも…」

松本さんが俺の耳元に顔を近付ける

「そんな可愛い顔してたら、襲われちゃうよ？」

「え？」

「これじゃ、智の心配も絶えないわな」

苦笑いする松本さん

「あの…どういう…」

俺、智に心配掛けてる？

「お茶付き合ってよ」

「え…」

「リハは終わってるから、中に入っても大丈夫
智は着替えに入ってるから会う事もないし」

松本さんに連れて行かれ、裏の入口から中へ入った

たまに聴こえる楽器の音

「さ、どうぞ？今日は時間がないから、淹れたてのコーヒーはご馳走できないけど」

紙コップに注がれたコーヒーをひとつ手渡された

「ありがとうございます」