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Happiness day

第19章 Do you…?

「あの、櫻井さん。これ、2日早いんですけど、バレンタインのチョコレート
怪我のお見舞いも兼ねてなんですけど、良かったらどうぞ」

バレンタインデー2日前の金曜日
就業時刻を過ぎ、デスクの上の片付けをしていると
同じ部署の後輩女子社員が、小さな包みを持ってやって来た

見舞いも兼ねてなら義理だよな

「いいの?ありがとう」

その小さな包みを受け取ると、その子はニコッと笑った

「それじゃあ、お先に失礼します」

「お疲れ様」

ペコっと頭を下げて帰って行く彼女の後ろ姿を見送った

「それ、何個目ですか?」

隣の席のニノからの質問

「5個目だけど?」

「はぁ…大変ですね、モテる男は」

「義理チョコだよ、みんなそう言ってたし
今の子だって、お見舞いも兼ねてって言ってただろ?」

「あーもう、女心がわかってないなぁ…」

「なんでだよ!」

「女性の言葉はそのまま受け取っちゃ駄目ですよ
『お見舞いも兼ねて』なんて理由付けしないと、渡す勇気が出ないんでしょ?」

「え…これ、本命って事?」

手にした箱に視線を落とす

「そうですよ。義理っぽく見せた本命です
そもそも、この2、3年は、社内で義理チョコなんて出回ってませんよ?」

「え…そうなのか?」

今年は14日が日曜だから、少ないかもとは思ってたけど…

「はい。俺は元々、義理チョコなんて悪しき風習だと思ってたんで、受け取らない主義でしたけど」

「えっ⁉︎受け取ってなかったの?」

「だって、おかしくないですか?
俺の事好きじゃないんですよ?
そんな人から、そんなに好きでもないチョコを貰って、ホワイトデーには貰った以上のお返しまでしなくちゃいけない
こんな理不尽なイベントあります?」

智も似たような事言ってたな…

「でも、どうやって断ってたんだ?」

「簡単ですよ。『お返ししないけどいいの?』って言えば、翌年からはみんなくれなくなります」

女性を敵に回しそうな言葉だな…
俺にはそんな事言う勇気ないわ

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