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帰りの支度が出来たのに、智がまだデスクに戻って来ない

書類を提出しに総務部に行っただけだよな？
何かトラブルでもあったかな…

様子を見に、総務部のある下の階に向かう

エレベーター前に到着すると、タイミング悪く、この階を出たばかり

1階下なだけだし階段で降りるか…

すぐ横にある階段を降りようとすると、話声が聞こえて来た

「ごめんね、気持ちだけ貰っておく」

この声…智？

「どうしても駄目ですか？」

もうひとりは女性の声だ

「義理なら貰うんだけど、違うんでしょ？」

「はい…本気です」

「だったら貰えない
貰っても、お返し出来ないから」

「恋人、いるんですか？」

「いないけど」

「それなのに受け取ってくれないんですか？
私、大野さんに嫌われてます？」

「嫌いじゃない。けど、受け取れない
本気のチョコは好きな人からしか受け取らないって決めてるから」

「…好きな人はいるって事ですか…」

「うん」

「そっか…なら、仕方ないですね…
大野さんがフラれる事なんて、ないですもんね…
わかりました…渡すの諦めます
失礼しました」

ヒールの音が下へと降りていく

智、やっぱりモテるんじゃん

なんだよ…自分はモテない的な発言してたクセに…

「あれ？翔？どうした？そんな所で」

階段を上がってくる智が俺を見上げる

「あ、いや…智がなかなか帰って来ないから、探しに…」

「あー、ごめん。待たせちゃったな
すぐに片付けるから、もうちょい待ってて」

階段を登り切った智が俺の隣に並んだ

「…うん。あのさ…」

「ん？」

「チョコ…貰わなかったんだね」

「あー…うん。本気みたいだったから…
受け取って期待させちゃうと可哀想じゃん？」

「そっか…」

智なりの優しさなんだよな…

それに比べて俺は…
駄目だなぁ…相手の気持ちすら汲みとってやれない