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Happiness day

第25章 夏疾風

山の幸をふんだんに使った夕食を堪能し
満腹になった俺たちは、風呂の時間まで少し散歩に出ることにした

周りは同じようなペンションが立ち並んでるだけで、コンビニさえもない
聴こえるのは虫の鳴き声くらいだ…

車も人も通らないから、堂々と翔くんと手を繋いで歩ける

「静かだね」

「うん、静か…
こんなに静かな所、歩いた事ないかも」

「熊が出るかもよ?」

「えっ!熊⁈」

「うん。ペンションに来る途中に『熊出没注意』の看板があった」

「やだ…会ったらどうしよう…」

「走って逃げちゃ絶対ダメだよ?
ゆっくり後ずさるのが良いんだってさ」

「うん、わかった。絶対走らない」

「まぁ、そうは言っても、実際会ったら走っちゃいそうだけどな」

「僕は腰が抜けて動けなくなりそう…
そうなったら、智くんひとりで逃げていいからね?」

本気で熊に会う事心配してるんだ…

100%無いとは言えないけど
ペンションのオーナーに聞いたら、今年は熊が出たって情報は今の所無いから大丈夫って言ってた

軽い気持ちで言ったのに、翔くんを怖がらせちゃったかな…

「そんな心配しなくても大丈夫だよ
今年はまだ熊出てないってオーナーが言ってたし
万が一出ても、翔くんひとりを置いてく事なんてしないから…
そんな事したら、死ぬまで後悔しちゃうよ」

翔くんの足が不意に止まった

繋いでいた手が解かれる…

「翔くん?」

どうしたのかと、訊ねようとしたら
翔くんの腕が俺の腕に巻きついた

「ありがとう、智くん」

言葉と共に、頬に触れる温かくて柔らかいモノ…

「へ…」

ほっぺたにだけど、それでも翔くんからされるキスは初めてで…
驚きのあまり固まってしまった

「いこ?智くん…」

「う、うん」

翔くんに促され歩き出す

絡みついてる腕と頬に残る唇の感触…

いつもと違う翔くんに、心臓がバクバクする

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