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Happiness day

第25章 夏疾風

温泉から上がり、パジャマ代わりのTシャツとハーフパンツを履く

翔くんを見るとパジャマのボタンを留めていた

パジャマなんだ…翔くんらしいな…

ボタンを留め終わった翔くんが、備え付けのドライヤーで髪を乾かす

「お待たせ」

鼓動が早いのは、長湯をしたから?
それとも、いつもと違う翔くんを見て?

温泉で程よく蒸気した頬
ドライヤーで乾かしただけのふわっとした髪
瞳はいつもより潤んでいるような…

「智くん?どうしたの?ぼーっとして…
のぼせちゃった?」

ハッと意識を戻すと、目の前に心配そうな翔くんの顔

「ううん、大丈夫!
温泉が気持ちよかったから、気が抜けちゃったのかな」

「それならよかった…」

ホッとした表情を浮かべた翔くんの手を握った

「戻ろっか」

「うん…」

翔くんは微笑みながら手を握り返してくれた

人が全くいない訳じゃないけど
この場でしか会う事のない人たちだってわかってるせいなのか
あまり周りの目を気にしないでいられる

本当はどこででもそう出来れば良いんだけど
世間的にはまだ同性同士の付き合いに否定的な考えを持つ人もいる

俺は別にいいんだ…
俺自身、理解されないなんて事は、今までにもあったから

でも優等生の翔くんは、そういう目で見られる事に慣れてなさそう…

俺と付き合ってるせいで、翔くんが誰かから傷付けられるのは嫌だ

なら、付き合わなけりゃいいんだろうけど、それも嫌だ

こんなに人を好きになったのは人生初めてで
おそらく、人生最後なんじゃないかな…

『一生に一度の恋』なんて、ドラマチックな言葉、俺には似合わないけど

そう思ってしまうくらい、惹かれて止まない人なんだ

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