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Happiness day

第25章 夏疾風

部屋に戻って窓を開けた

「エアコンなしでいけるな」

「昼間もそんなに暑くなかったけど
夜になると涼しいくらいだね
温泉で熱くなった体冷ますには丁度良い…」

隣に立った翔くんの髪を、そよ風が僅かに揺らす

目を細め、気持ち良さそうに風を受け止める翔くん…

「…綺麗だな」

何度この言葉をキミに伝えただろう
いや、正確には伝わってないか…
照れ臭くて、いつも逃げてた

「星?綺麗だよねぇ…」

キミがそう言うのも無理はない
窓の外に見えるのは、他のペンションの明かりと満天の星だけ

でも俺の目には、星空よりも輝いてるモノが目に映る

「ううん…翔くん…」

風にそよぐ翔くんの髪をそっと手で梳いた

「えっ⁈」

ビクッとして、こちらを振り向く翔くんを真っ直ぐに見つめ、もう一度伝える

「綺麗なのは、翔くんだよ」

ニコッと笑ってそう言うと、翔くんの顔は風呂上がり直後よりも紅く染まった

「ぼ、僕⁈」

「そう…翔くん。
クリスマスのイルミネーションよりも
真冬の空に上がる花火よりも
水平線から昇る朝日よりも
翔くんの方が綺麗だよ?」

「そ、そんな……綺麗なんて、今まで誰からも言われた事ない…」

「他の人に言われなくていいんだよ
俺の目にはそう映ってるんだから…」

世の中の恋人たちだって、きっとそうだ

恋人が一番綺麗でいる瞬間は、自分の目の前にいる時

自分がそこにいるからこそ輝いてくれる

ほら、今だって…

「智くん…」

俺を見つめる潤んだ瞳も
俺の名を発するその艶めく唇も

俺がいるから、美しく輝いているんでしょ?

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