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Happiness day

第26章 太陽の世界

「うんっ!美味しいよ!潤ちゃん!」

「ほんと?」

「ほんと、ほんと!」

雅紀は優しいから、どんな物を作っても美味しいとは言ってくれるけど
作った物、全てが成功な訳じゃない…

一年も付き合うと、雅紀の笑顔にも段階がある事がわかって来た

で、今日の笑顔は、かなりの高評価

俺もひとくち口に入れる

「うんっ!うまっ!」

「これならお店に出せるでしょ?」

「ん〜、でも実際出すとなると難しいかなぁ」

「なんで?こんなに美味しいのに」

「ちょっと手間が掛かるかな…
メインは食事だし、コーヒーは拘りたい
ひとりで仕込みから何から全部やるから、スイーツには時間を割けないなぁ…」

「人雇えばいいんじゃないの?」

「ん〜…店が繁盛すれば、それもありだろうけど
最初からは無理だろ…
どれだけお客さんが来てくれるかわからないし」

「そっかぁ…また食べたいと思ったんだけどなぁ…」

雅紀が残念そうに、フォークに乗ったタルトを見つめる

「雅紀なら自分で作れるだろ?
レシピもあるんだし
今度は自分で作ってみなよ」

最近は俺ばっかりが作ってるけど
最初の頃は、雅紀に教えてもらいながら一緒に作ってた

サークルで磨いた腕は相当なもので
『家庭のおやつ』の域を超えていて驚かされた

俺のスイーツ作りの師匠と言える腕前だ 

雇うなら雅紀が良いなぁ…
雅紀になら、スイーツを任せられそう

ま、無理だろうけどね

今年度、大学卒業見込みの雅紀を、小さな喫茶店の店員なんかに雇うなんて…

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