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Happiness day

第27章 movin’ on

「なんでおばあちゃんは苦労したの?」

「祖母は、一人暮らしだったんですけど、年を取ってからちょっと足を痛めて…
歩けなくはないですけど、長い時間の散歩は出来なくなりました
その事を、飼っていた犬に謝ってる姿を見たので、俺のせいで可哀想なことしちゃったな、って…
それに、その犬が死んでしまった時も、凄く哀しそうだったので、余計な哀しみを与えてしまったのかな、って…」

「そっかぁ…」

頭の上にあった大野さんの手が、ポンポンと優しく頭を叩く

慰めてくれてるみたいに感じるけど
そんな筈ないよな…

動物を大切に思う大野さんが、俺のした事を許すはずがない

身勝手な我儘のせいで、ペットと飼い主、両方に可哀想な事をしたんだから…

「おばあちゃんさ…翔ちゃんが思ってるような苦労は、実際感じてなかったと思うよ?」

「えっ?」

大野さんから掛けられた意外な言葉に、顔を上げると、ふにゃんと表情を崩した

「おばあちゃん、そのワンちゃんの事、大好きだったでしょ?」

「えぇ、まぁ…大型犬だったんですけど、室内で飼っていて、常に側にいる感じでした」

「お互い、大好きだったんだね…
だったらさ、亡くなった時に哀しむのは当たり前でしょ?家族同然なんだから
でもさ、翔ちゃんだって、いつかは家族を亡くす
その時、その方と過ごした日々まで哀しいと思うかな?」

家族と過ごした日々…は、哀しいとは思わない
家族がいたから、楽しい日々を送って来られたんだから
哀しいのは、亡くなったって事だけ…

「いいえ、思いません」

「でしょ?おばあちゃんも一緒だよ
そのワンちゃんと一緒に過ごした時間はしあわせだったと思う
一人暮らしなら、なおさらじゃないかな…
翔ちゃんの我儘から始まった事だとしても
おばあちゃんは、ワンちゃんを飼った事を後悔してないと思うよ?」

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