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Happiness day

第27章 movin’ on

雅紀が『すぐにわかる』と言った謎の現象は、翌週になっても解明されず

俺は、3回目の講習を無事終了させた

「これで翔ちゃんは、この施設から動物を引き取る権利が得られた訳だけど
ジュンが参加する譲渡会まで、あと2週間あるから
実際引き取るかどうかは、それまでじっくり考えてね?」

「はい。今までありがとうございました」

改めてお礼を言うと、大野さんの眉毛と目尻が下がる

「なんか、お別れみたいじゃん…」

「そんなっ…違いますよっ…
ただ、ここまでこれたのは、大野さんのお陰だから…
そのお礼を言いたくなっただけです
ジュンやカズとの出会いはもちろん大きな物でしたけど
サクラとモモに会わせてもらえた事も、勉強になりましたから」

「ふふっ…ならよかった…
もう会えないのかと思って、寂しくなっちゃったじゃん」

「また来週も来ます…
講習は終わったけど、ジュンには会いたいから」

「そっか…『待ってる』って、言いたいとこなんだけど
俺、来週、仕事休みなんだ」

「え?そうなんですか…」

なんだ…残念…

っ⁈…なんだ?残念って⁈

「来週ね?サクラとモモを返すんだ」

「返すって、施設に?」

「うん…この前、翔ちゃんが来てくれて
俺以外の人とも触れ合えるってことがわかったから、返す事にした」

「それって…俺のせい?」

「ははっ!『俺のせい』って
それじゃ、翔ちゃんが悪い事したみたいじゃん」

「でも…」

「そんな哀しそうな顔しないで…
違うでしょ?家から巣立って行く事は、あの子たちにとって、しあわせな事だって言ったよね?」

「そうですけど…でも、大野さんが…」

「俺の心配してくれたの?
俺なら大丈夫だよ…いつもの事だから」

ふにゃりと笑って、ポンポンと俺の頭を叩く

今、慰めて欲しいのは俺じゃないよね?

大野さんの笑顔…いつもと同じだけど、いつもと違う…

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