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Happiness day

第27章 movin’ on

大野さんの腕の中にいると、ドキドキして熱いんだけど
嫌な感覚じゃなくて、寧ろ心地よくて、自分でも不思議なんだ…

大野さんが望んでくれるなら、いつまででもこうしていてあげるのに、って…

そっか…だから、どんな動物でも大野さんに懐いちゃうんだ

「ごめんな?翔ちゃん…」

「え?…なにが?」

大野さんが俺の両肩を掴み、俺の体を離した

「この前、サクラたちがいなくなっても平気みたいな事言っておきながら、ダメージ受けてるから…」

苦笑いする大野さんは、やはり哀しそう…
そんな表情をさせる為に、俺はここに来たんじゃない

今度は俺から大野さんを抱きしめにいった

「そんなこと、謝らないでください…
大野さんが寂しがってるって思ったから、俺はここに来たんです」

「翔ちゃん…」

「寂しくないはずないでしょ?
大野さんが言ったんですよ?
ペットは家族だって…
家族が離れて行く時は、どんな理由だって、その瞬間は寂しいんです…
娘を嫁に出す父親だって、泣いちゃうんだから」

「ふふっ…そうだよな…
娘を送り出す時は、父親も泣くよな…」

「そうです…だから、大野さんも泣いていいんですよ?」

「ん…ありがと…翔ちゃん…
でも、俺はもう大丈夫…」

「無理しなくていいんですよ?」

「無理なんてしてないよ?
一番傍にいて欲しい人が来てくれたから、もう平気…」

「えっ!そうなんですか?」

ガバッと体を離し、大野さんを見下ろした

俺、超恥ずかしいことしてない?

大野さんがひとりで寂しがってるって、勝手に思い込んで
突然、家まで押しかけて
しかも、抱きしめちゃうなんて…

そうだよな…こんなに優しい人なんだから、きっと素敵な恋人がいる

傍にいて慰めてくれる人がいるんだ…
俺が来る必要なんかなかった

大野さんがひとりじゃなくて良かった筈なのに

なぜか俺は、素直に喜べなかった…

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