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Happiness day

第28章 Crasy Moon ~キミ•ハ•ムテキ~

目玉が飛び出すんじゃないかってくらい目を見開いて
俺を見つめたまま固まってしまったしおん

「いくら俺が恋愛から遠ざかっていたからって
抱けば、男か女かくらいは流石にわかるよ」

緩めのワンピースで隠してたんだろうけど
抱きしめたらわかる…この硬さは男性の肉体

「…そっか」

観念したようにしおんが口を開いた

「で?男だってわかったのに、何で離さないの?」

そんなの決まってるじゃん?

「好きだから」

「それは『しおん』が女だったら…でしょ」

哀しそうに微笑むしおんを見て、しおんも俺を好きだと確信し、改めて俺の気持ちを伝えた

「いや、『しおん』が櫻井さんだってわかっても好きだよ?」

しおん…いや、櫻井さんが驚きの表情をした

「そこまでわかってたの?
なんでわかった?俺が櫻井だって」

「『しおん』が男だってわかったら
俺の中の疑問が全部解決した」

「疑問って?」

「しおんの口元が誰かに似てるのに、思い出せないってのが、一番大きなモヤモヤだったかな…
最近会ってる筈なのに、なんで思い出せないんだろう?って、凄く気持ち悪かった
そりゃそうだよね?記憶を辿ったのは、全員女性だったんだから
だから『しおん』が男だってわかった瞬間に、櫻井さんの唇が、俺の頭の中に浮かんだんだ」

「唇だけで俺に辿り着いた?」

「うん。あとは、声が決定打?
俺、櫻井さんの声好きなんだよね…
好きな人の唇から好きな声が聴こえて来て、めっちゃ嬉しい」

櫻井さんは少し驚いた顔をした後、嬉しそうにはにかんだ

俺の好きな笑顔…

男とか女とかどうでも良いんだ
 
俺が好きになったのは、人柄の良さが滲み出てるこの笑顔の持ち主なんだから

微笑みを湛えるその頬に手を添えた

「あっ…」

軽く驚きの声を上げた櫻井さんに、微笑んでみせる

「こんな魅力的な唇…一度見たら忘れられないよね」

「…さと…」

潮風に当たっていた唇は冷たい筈なのに、とても熱かった

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