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Melting Sweet

第3章 Act.3

 ――何なのよいったい……?

 私は怪訝に思いながら、杉本君の横顔を睨む。
 すると、私の視線に気付いたのか、杉本君がこっちを見た。

「どうかしました?」

 憎たらしいほど爽やかな笑顔を向けてくる。

 私は眉根を寄せ、「別に」とつっけんどんに返した。

 そんな私を杉本君はなおも不思議そうに凝視する。

「俺、何かしましたっけ?」

「別に」

「もしかして、体調悪いんじゃないですか?」

「別に」

「そうですか? ほんとに無理とかしてないですか?」

「別に」

 私に気を遣っているのがありありと伝わってくる。
 けれども、それがよけいに癇に障る。
 口を利くのも面倒で、『別に』以外の返答が出来ない。
 自分でも嫌な女だと思うから、端から見ているともっと感じの悪さが際立っているに違いない。

「あんまり無理しちゃダメですよ?」

 先ほどとは打って変わって控えめに笑みを浮かべた杉本君は、笑顔と同じようなやんわりとした口調で念を押してきた。

 けれどもやっぱり、私は憮然としたままだった。
 今度は頷きもせず、フイと杉本君から顔を背ける。

 ――けど、どうしてこんなにイラッとするんだか……

 そう思いつつ、本当は分かっている。
 〈杉本君に〉よりも、〈素直な反応が出来ない自分〉に苛立っているのだと。

 杉本君は本当にいい人だと思う。
 誰からも煙たがられている私に対しても、気さくに明るく接してくれる。
 同情などではなく、普通に周りと同じように。
 それは私にもよく伝わっていた。

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