
その瞳にうつりたくて…
第2章 音色
「はい。それじゃあ、今から30分の休憩です。しっかり水分補給して来て下さい」
休憩時間になると、生徒達はぞろぞろとレッスン室から出ていく。
各自水分補給をしたりトイレに行ったり好き好きに過ごしている。
はぁ、俺もトイレにでも行って水分補給するか…。
そんな事を思いながらレッスン室から出ていった。
マルチな才能を発揮出来る芸能人を育てあげる芸能スクール。
と、言っても中は普通の学校とそう変わらない。
トイレも食堂もあるし、平井先生のコースとなると高級なピアノや音楽機器も揃ってる。
防音設備の整った教室もある。
巷じゃそこそこ有名な学校らしいし、そこで指導員をさせて貰ってるわけで給料もそこそこいい。
はたから見れば俺の人生も仕事も満更悪くもないだろう。
でも、俺の心はカラカラに渇き切っている。
俺が本当にいるべき場所はここなのだろうか?
俺は本当に、今のこの状況に満足しているのだろうか?
まぁ、そんな事を考えたところで40歳の俺に何かを変える力なんて残ってない。
何かを変えるには、俺はあまりにも歳を取りすぎた。
はぁ、と溜め息を付きながらトイレに向かう廊下を歩いていると…。
~♪♪、♪
「…ん?」
廊下を通り抜ける風に乗って、どこかからピアノの音色が聞こえた。
