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その瞳にうつりたくて…

第2章 音色

まさか、俺をからかおうとしている生徒の1人か?
それとも平井先生の生徒?

俺の足はそのメロディーに引き寄せられるように、音色を追いかけて歩き出した。

主役に抜擢されて喜んでいたあの頃を思い出す…。
主役に抜擢されて喜んでいたあの瞬間。

そんな若かった自分を思い出しながらそのメロディーに引き寄せられていく。

~♪ッッ、♪♪~

そのメロディーが聞こえるのは平井先生のコースの教室から離れた場所から聞こえてくる。
ピアノが置いてあるのは平井先生の教室だけじゃない。
でも、この学校に俺の事を知ってる人間なんてどれくらいいる?
いたとしても、何でわざわざピアノで弾いてるんだ?
こんな大昔の戦隊物の主題歌を。

俺は自分の耳だけを頼りにメロディーに引き寄せられて、廊下を歩く。
こんなに音が聞こえてるということは、防音設備の整った部屋じゃないのか?
それとも、ドアを全開で弾いてるのか?

「……っ」

辿り着いたのは、やはりピアノが置いてある音楽コースの教室。

『第三音楽教室』

「第三音楽室なんかあったんだ…」




ピアノの音色はここから聞こえて来ている。
しかも、ピアノの主は気づいてないのかドアが少し開いている。
これではピアノの音色が漏れるのも無理はない。

~♪♪、♪♪♪

尚も聞こえ続けるピアノの音色。

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