
その瞳にうつりたくて…
第2章 音色
~♪~♪♪~♪
俺はピアノなんて興味がないし、触ったこともない。
メロディーの良し悪しもピアノのテクニックもわからない。
でも、この女性が弾いてるメロディーは聞いてるだけで耳に心地いい。
それは、自分が出演した戦隊物のメロディーとかの欲目じゃなくて
この女性のピアノのテクニックから来るものだろうか。
~♪♪~、♪~
楽しそうにピアノを弾いてる彼女は、俺が教室に入って来たことに気がついていない。
俺も、声をかけようかと思ったがまるで時間が止まったかのような気がした。
むしろ、この教室に入ってしまって申し訳ないと思ってしまった。
あまりにも楽しそうにピアノを弾いてるから。
…この子、どこのクラスの子だ?
それとも、新しく講師に来た指導員か?
ピアノを弾くのはいいが、もうすぐ休憩時間も終わるし、声をかけた方がいいだろうな。
もし生徒だったら次のレッスンに遅れたら叱られるだろうし。
頭ではわかってる。
声をかけた方がいいと言うのはわかってる。
でも、彼女のピアノの音が催眠術のように聞こえて…
声が出せない。
あー、どうしよう…。
本当に声をかけないと、どんどん時間が…。
どうしようか…、とそんな事を考えていると
――ガシャンッッッ!!
「…っ!?」
俺の足元に何かが引っ掛かりその場に転がった。
床に転がった衝撃で凄い音が響いた。
