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その瞳にうつりたくて…

第2章 音色

彼女が小走りに俺の方へ向かってきた。
この教室の出入口は1つしかない。
俺が今いる出入口から出ていこうととしてるのだろう。

「し、失礼しました!」

そう言って部屋を出ていこうとした時だ。


「きゃあっ!」
「あ、危ねぇっ!」


小走りに走る彼女。
しかし、俺が今転がしてしまったほうきを踏み、バランスを崩して危うく転びそうになってしまった。
思わず反射的にその子の体を支えてしまったが…。

「す、すいません…」
「い、いや…」


やべ…っ。
こんだけ近寄ったら俺の顔なんてモロバレじゃねぇか!
彼女の体を支えてる、俺と彼女の顔の距離は約20cm。
運が悪ければバレる…。


「あ、ありがとうございます…」
「どう致しまして…」

最悪だ。
俺だってバレたらこの子どんな表情になるんだろ?
さっきまで弾いていた戦隊物の主役がこんなところにいるなんて。

「あの、重ね重ねすいません」
「あー、気にしないで…」

ふっと顔を上げた彼女。
しかし、その瞳は俺を見ていない。
いや、顔はこちらを向けているのだが、その視線は俺の目から少し外れている。

ブラウンの、色素の薄い綺麗な瞳。

「あの…」

思わずその視線の行方が気になって声をかけてしまった。
もしかして、この子…。

「すいません。私、目が悪くて…」
「え?目が…?」

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