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その瞳にうつりたくて…

第3章 再会

彼女が弾いていたピアノは、力強さの中に優しさを感じられた。
ピアノのことなんて何もわからない素人の俺が思わず聞き入ってしまった。
優しくて、どこか懐かしさを感じさせる旋律。

あれは…、俺を惑わそうとした幻だったのか?







と、そんな事を考えながら平井先生と飲んでいたが
いくらご主人が残業とは言え、既婚者の平井先生と夜遅くまで一緒にいるのはさすがにヤバい。
頃合いを見てタクシーを呼び平井先生を家まで送って行った。
平井先生はまだ帰りたくないとか、もう一軒行こうとか言ってたが。

つーか、平井先生も相当ストレスが溜まってるみたいだな。

タクシーの運転手に平井先生の自宅を伝えて送って貰うことにした。
俺の家はこの店から歩いて帰れる距離だし、タクシーを呼ぶまでもない。
夜風にあたりながら散歩がてらに歩いて帰るか。
酔い醒ましにもちょうどいい。

…はぁ、やれやれ。
忘年会や新年会で平井先生や他の先生と飲むことはあるが
平井先生のここまでの乱れ方は初めて見たな。

夜空を見上げながら風に当たってみた。
頬をかすめる風が酔った体を冷ましてくれるようで気持ちいい。

「………。」

この東京で成功したくて上京したのに、俺の今の人生は成功と言えるのか?
勝ち組と言えるのか?
ただ単に流されて生きてるだけじゃないのか?

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