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その瞳にうつりたくて…

第3章 再会

「ねぇ、今日のカトセンおかしくない?」
「マジでちゃんと私達の事育てて売り出してくれる気あんのかな?」
「あー、マジやる気出ない。マジで不安しかないんですけど~」

演技の順番を終えた生徒に、自分の順番待ちをしてる生徒。
俺の失態を笑ったり、バカにしたり、ひそひそ声で話してるつもりだろうが聞こえてるっつーの。

マジでヤバいな、俺。
このままじゃ考え込み過ぎて仕事にまで支障を来してしまう。

俺は、何を考えてるんだ。
頭が可笑しくなってしまったのか。
昨日の彼女の事を考えると謎が深まるばかりだ。

何故、あの曲を弾いていたのか。
何故、もう誰も使っていない音楽室にいたのか。
生徒なのか指導員なのか、それすらわからない。

マジでこのままじゃ俺の中で幽霊として片付いてしまう。

「…………。」


あの子は、今日もあの音楽室にいるのだろうか?
そしてまた、あのピアノでメロディーを奏でているのだろうか?

今日もあの音楽室に行けば、あの子に会えるのだろうか?

俺は…、何をしようとしてるのか?
俺の正体がバレずに安心したはずなのに、どうして俺はまたあの子に会いに行こうとしてるんだ。

何を自ら危険な道に足を踏み入れようとしてるんだ?
でも、俺は彼女の事が知りたいと思った。
あの曲を弾いてくれているということは、少なくとも彼女の記憶の中には俺はまだいるということだ。
誰もが忘れ去った遠い過去の一戦隊物の1人に過ぎないが。

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