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その瞳にうつりたくて…

第3章 再会

歩きながら耳を澄ました。
全身の神経を聴覚に集中させた。
それはまるで、森の中を野生の勘だけで生きてる野性動物のように。

もう1度、彼女のピアノが聞きたい。
幽霊でもいいから、彼女が奏でるピアノが聞きたい。




~…、~――‐―♪…





「………っ!」

静まり返る廊下。
風邪に混じって微かにピアノの音が聞こえた気がした。

今、ピアノの音が…。
もう1度耳を澄ませて見るがそれっきりピアノの音色は聞こえてこない。
気のせいだったか?

「………っ」

もし、あの子が幽霊だとしたら、俺は完全に取り憑かれてしまったのだろう。
俺の足は昨日と同じ経路を歩き出した。
頼りは一瞬だけ聞こえたピアノの音。
気のせいかもわからないそんな不確かな音色だけを信じて第三音楽室へと向かった。

もしあの子がいたらどうする?
何を喋る?
俺の正体を明かす?
いや、正体を明かすのはもっと後でもいいだろう。
戦隊物の主題歌を弾いていたところで俺のファンという訳でもないだろうし…。

今はただ、彼女が何者かだけでも知りたい。



第三音楽室の前に到着した。
昨日はピアノのメロディーに引き寄せられて何も感じなかったが
改めて周りを見渡すと静けさだけがしんっと響いている感じがする。
確かに幽霊が出そうな雰囲気ではある。

誰も使っていない第三音楽室付近に近寄る人間なんかいないか。

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