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その瞳にうつりたくて…

第3章 再会

昔の俺について熱く語ってくれてるが…
聞いてる俺はめちゃくちゃ恥ずかしいしめちゃくちゃ気まずい。
でも、当の彼女は俺がレッドだと気づいていない。
そんな事を知らずに目を輝かせながら語ってくれてる。

「あ、いや、あの…」

ど、どうする?
ここで俺の正体を打ち明けるか?
いや、今打ち明けたら、この子は絶対驚いてしまう。
でも…

「レッドは、私の憧れで初恋なんです」






――――ドキッ…。






照れ臭そうに頬笑む彼女の笑顔を見た瞬間、胸がギリッと締め付けられた。
俺が初恋の相手だと嬉しそうに語る彼女があまりにも天真爛漫で、無邪気で。

「―――――。」

あー、くそっ。
何で何の言葉も出て来ねぇんだ?
俺がレッドだって打ち明ければいいのに。
でも、彼女の顔を見てると何も言えなくなった。

憧れのレッドが今や演技の指導員…。
俺の追い去らば得た姿は見えてないだろうけど、そんな真実は知らせたくないし、バレたくない。

「…でも、そのレッドだって今じゃおじさんになってんじゃない?ま、まだ、俳優を続けてるかもわかんないし…」

俺は…、自分を守るための伏線を張った。
憧れや初恋なんて時が経てば変わっていく。
あの頃はキラキラと眩しく輝いていたものでもいつかは色褪せてしまう。
現に俺もあの頃に比べたら当然ながら老けてしまっている。

「と、とっくに落ちぶれてるかもな…」

あの頃、夢ばかり見ていた俺はもういない。

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