
その瞳にうつりたくて…
第4章 she is...
結局、飲み会がお開きになったのは11時。
ビールで酔い潰れた平井先生をタクシーに乗せて家まで送ってもらった。
外に出てみると、体に感じる風がやけに生暖かく湿っぽい。
空は夜空というより鉛色の厚い雲が広がっている。
星も月も見えない夜空。
雨でも降りそうだな。
そんな事を思いながら自宅に到着。
風呂に入り歯を磨き、そのままベッドに入り就寝。
このまま起きてたって嫌な考えしか浮かばない。
何も考えずにぐっすり眠りたい…。
そして翌朝、俺の予想は当たった。
ザァー…ッ!
「はぁ、雨か…」
次の日、まるで空の貯水槽が壊れたのかと思うぐらいの大雨。
今にも警報か注意報が出そうな降り方だ。
雨の勢いで道が煙っている。
「さて、今日のレッスンは…」
しかし、どんな事態でも休めないのが俳優業。
こんな天気でも生徒達はちゃんと登校して来ている。
ほとんどの生徒がびしょ濡れだが。
「今日は体を使った演技です。パントマイムだと思ってくれればいいです」
びしょ濡れになった服はスクールで着替えたのだろう。
でも、髪の毛はびしょ濡れになってる。
レッスン室の床が水滴で水浸しだ。
あとで拭いとかねぇとな。
「それじゃ、まずはエレベーターに乗る演技から。みんなも路上パフォーマーの演技は見たことあるだろう?あんな感じだ」
