
その瞳にうつりたくて…
第4章 she is...
あの子は…、水城綾は24歳で、俺からすれば妹と呼べる年より年下。
あんな15歳以上歳が離れてる女の子に、俺は癒されてしまっていた。
あの子の、優しい柔らかな木漏れ日のような雰囲気が好きだった。
「はぁ…」
壁にもたれながらため息をつく俺を見て生徒達がコソコソと陰口を叩き始める。
「今日もカトセンやる気なくない?」
「えー、いつもの事じゃん」
今は生徒の陰口もどうでもいいわ。
あの教室にはもう行ってはダメだ。
行かない方がいい。
何度も何度も自分に言い聞かせた。
傷つくのは目に見えてる。
彼女の為にも、俺の為にも行かない方がいい。
わかってる。
それは、わかってる…、のに。
休憩時間。
「…………。」
……はぁ、何やってんだよ、俺は。
休憩時間になり、生徒達がいなくなったレッスン室で次の時間の課題を考えていた。
でも、頭の中から彼女の事が消えない。
行ってはダメだとわかっていたのに、彼女を傷つけるだけだとわかってるのに。
気づけば俺は第三音楽室の前に佇んでいた。
マジで何やってんだよ、俺は…。
来たらダメだとわかってるのに。
ここへ来る理由より来ては行けない理由の方がたくさんあるのに。
俺の正体がバレたら、彼女を傷つけるだけなのに。
