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大きくて分厚い音楽室のドア。
中の電気が付いてるかどうかわからない。
でも、中からピアノの音は聞こえない。

やっぱり、今日は来てないのかも知れない。
こんな大雨で視界が遮られるような日は自宅にいるのかも知れないな。

ホッとしたような、がっかりしたような…。



どうせ彼女は来てないと、ここで諦めてレッスン室へ戻ればよかった。
なのに、俺は「もしかしたら…」と思ってしまった。

「――――。」

第三音楽室のドアの取手に手をかけた。
彼女が来てるかどうかもわからないけど、もしかしたら来てるかも知れない。
彼女はピアノが好きだし、この大雨の中でもここへ来てるかも知れない。

いて欲しいような、いて欲しくないような複雑な思い。
高鳴る動悸を落ち着かせようと深呼吸を一つ。

――――っ。


ガラッ…。

ゆっくりと音楽室のドアを開けた。







中は…、一応電気は着いている。
電気が着いてるということは、彼女は来てる？

「す、すいません…？」

ドアを開けて、忍び足で中に入った。

しかし、中には誰もいない。
電気は着いてるのに、彼女の姿はどこにもない。
音楽室の窓、外の豪雨が窓を殴るかのように激しく打ち付けている。

あぁ、すげぇ雨だな。
やっぱり、今日は彼女は来てないみたいだな。