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その瞳にうつりたくて…

第4章 she is...

ホッとしたようながっかりしたような複雑な気分だ。
でも、これでいいんだ。
これを期に彼女と関わるのはやめた方がいい。
今日はここに来てしまったが明日からは来るのはやめよう。

これ以上は、本当に…。



踵を返し音楽室を後にしようとしたその時。







――――「ハ、ハルさん…?」

「え…?」

打ち付ける豪雨の音に混じって微かに俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
それはか弱く、集中しないと聞き逃してしまう小さな頼りない声。

その声に思わず振り返ると、ピアノの陰に隠れてあの子がいた。
水城綾がいた。

「あ、綾ちゃん…?」

ピアノの陰に隠れるようにしてうずくまり、ガタガタ震えてる彼女の姿があった。

「ハ、ハルさんですか…?」
「ど、どうしたのっ!?そんなとこで…!」

うずくまりガタガタ震える彼女を見てこれは只事じゃないと勘づき俺は思わず駆け出していた。
一体なんでそんなピアノの陰にいるのか?
何でそんなにガタガタ震えてるのか?
何があったのか?

うずくまる彼女のそばに駆け寄り、彼女の目線に合わせるように俺もその場にしゃがみこんだ。

「どうした?何があった!?」
「ご、ごめんなさい…、あの…」

彼女は今にも泣き出しそうなぐらいに怯えてる。
体をガタガタと奮わせながら、目を潤ませて。

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