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その瞳にうつりたくて…

第6章 友達

こんな若い子がこんなおじさんと恋に墜ちるはずがない。
冷静に考えたらわかることなのに、こんな手に引っ掛かるとは我ながら情けない。

「あー、そろそろ休憩時間も終わるな」
「もうですか?早いですね」

確かに。
彼女と話してると時間があっという間に過ぎてしまう。
それは、俺も彼女との時間が楽しいと感じてるから。
この教室を出るときは少なからず名残惜しい気持ちがある。

「じゃ、また」
「はい」

前まで彼女に会うのが怖かった。
でもいつの間にかその感覚も麻痺してしまった。
まるで長年の友人と別れるようにスムーズに挨拶を交わすようになった。

「あ、あの、ハルさん」
「ん?」

教室を出ようとした、その時

「さっきの話、ちょっとは考えて下さい…」
「え?さっきの話?」



いつもは俺に手を振ってくれるのに、今日は振ってくれていない。
それどころか、彼女は視点の合わない瞳でこちらを見ている。

ってか、先の話って何だ?

「私の事。彼女候補にどうですか?」
「あ、あのな~」

やっぱりこの子は天然だ。
ついさっきその悪戯に引っ掛ったばかりなのに、物の数分で同じ手に引っ掛かるわけないだろ。

「ははっ、もうその手には引っ掛からねぇよ!」
「バレたか…」

引っ掛かけるならせめて別の日にすればいいのに。
そこまで記憶力は落ちぶれてねぇよ。

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