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その瞳にうつりたくて…

第7章 悪戯

「あの、小野…。悪いけど相談があるならレッスンが終わってから――――」

全てを言い終える前に小野は背後に回していた両手を前に差し出して

「これ、どうぞ!」
「えっ?」

俺に何かを押し付けるように手渡しそのままどこかへ駆けて行ってしまった。
小野に渡された何かを落とさないように両手で受け止めた。
が、これは何だ?

「あ、おい、小野!これ…」

ふっと見ると、小野が手渡して来たのは可愛らしい袋。
ピンクのリボンで括られた透明のラッピング袋。
中にはクッキーが入っていた。

…何だこれ?
クッキー、だよな?
何で小野が俺にクッキーなんか渡したんだ?
もしかして、毒入りか…?

って、今は毒入りクッキーはどうでもいい。
とにかく急いで音楽室に向かわねぇと。
俺はクッキーを持ったまま音楽室に急いだ。
いつもならこういう荷物は一旦自分の鞄の中に入れとくが、今はその時間すら勿体ない。

俺は一人で泣いてるかも知れない彼女が気になって
小野の気持ちも生徒達の噂も全く気にはしていなかったし気づいていなかった。
自分の気持ちすらわからない俺はあまりにも鈍感過ぎた。



「へぇ、小野が先生にクッキー渡したの?」
「みたいだよ?さっき廊下で見た」
「まぁ、気持ちはわかる。最近のカトセン、ちょっとかっこいいよね…」



早く、早く彼女に会いたい…。

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