女忍者(くのいち)忍者狩りに遭う。
第1章 一里塚で
「日本橋から二十三里……か」
私は一里塚に笠を置き、松の根元に腰を下ろした。宿でもあるのか、一面に石畳が敷かれたその峠の麓にはぽつりぽつりと小さな明かりが見える。荷馬車がガシャガシャと軋むような音を立てながら、足早に遠ざかるのが見える。
辺りの草がカサカサと揺れた。女の一人旅はとても危険だ。そのくらい知っていた。だから、私の旅装束は男性のものを着け、笠で顔を隠していた。
ヒュッと何かが風を切る音がした。
「はっ……」
怪しく銀色に輝く一筋の何かが私の視界に飛び込んだ。慌てて松の枝に飛び移る。
トン、トトと木を叩く音がして、髪がふわっと揺れた。
手裏剣だ、ととっさに考える。
私は猫のように身を翻して松の根元の草むらに飛び込んだ。青い匂いが鼻を突く。誰かに命を狙われることなど、いつものことだった。
「殺《や》ったか」
男のかすれた声。
恐らく忍びではない。忍びなら、目的を果たしたあとは、さっさと声も立てず立ち去って自分の気配を消すはずだ。
男は草むらを探っているのか、あちらこちらでガサガサと草を踏みしめる音がして、その音が近づいた。
私は一里塚に笠を置き、松の根元に腰を下ろした。宿でもあるのか、一面に石畳が敷かれたその峠の麓にはぽつりぽつりと小さな明かりが見える。荷馬車がガシャガシャと軋むような音を立てながら、足早に遠ざかるのが見える。
辺りの草がカサカサと揺れた。女の一人旅はとても危険だ。そのくらい知っていた。だから、私の旅装束は男性のものを着け、笠で顔を隠していた。
ヒュッと何かが風を切る音がした。
「はっ……」
怪しく銀色に輝く一筋の何かが私の視界に飛び込んだ。慌てて松の枝に飛び移る。
トン、トトと木を叩く音がして、髪がふわっと揺れた。
手裏剣だ、ととっさに考える。
私は猫のように身を翻して松の根元の草むらに飛び込んだ。青い匂いが鼻を突く。誰かに命を狙われることなど、いつものことだった。
「殺《や》ったか」
男のかすれた声。
恐らく忍びではない。忍びなら、目的を果たしたあとは、さっさと声も立てず立ち去って自分の気配を消すはずだ。
男は草むらを探っているのか、あちらこちらでガサガサと草を踏みしめる音がして、その音が近づいた。