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ダブル不倫

第5章 夫婦の時間

 午後八時、奈々葉はいつもより早く帰宅した。
 
 ふう……。
 
 玄関のドアを開けるとため息がでた。
 
「お帰り……」
 
 信也が出迎えてくれる。
 
 ――今日は早く帰ったね、は……? 今日はいつもと違う香りがするね、は……?
 
「お疲れさま。ああ、奈々葉、晩飯、出来てるから、すぐチンするね?」
 
 ――ああ……だよね……。
 
「ああ、ありがとう。助かる……」
 
 ――ふう……。
 
「奈々葉、そろそろ排卵日でしょ?」
 
 他愛もない食事の会話の中から飛び出した言葉だ。子供が出来るまでは、奈々葉の排卵日には必ずセックスする、というのが二人の約束だ。結婚して三年目になるが、二人に子供はまだ授かっていない。不妊治療にも通ってみたが、どちらにも特に異常はないと担当医は言っていた。
 
 奈々葉はスマートフォンに目をやって、カレンダーを見た。日付の欄に排卵日を示す赤丸が記されている。
 
 ――そうだっけ……。ちょっと、めんどくさい。

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