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ダブル不倫

第11章 誘導尋問

 午前七時四十五分。
 
 数日前、奈々葉と里井が初めて唇を重ねた時と同じ時間だ。営業部もシステム部もあの日とは違いトラブルの処理に追われていた。
 
 子犬のような目が奈々葉を見た。
 
「おはよ……昨夜はお疲れさま…………あれ……?」
 
 歯を磨いている美希に声を掛けられた。その目が少し充血しているように見える。
 
「おはよう……でも、何にも解決しなかったの……」
 
「奈々葉、今日、部長と同じ匂いがしてる……すこしは進展した?」
 
 美希が耳元で囁く。
 
「……えっ、いや……な、何も……ない……よ」
 
 自分の耳たぶが熱くなるのが分かる。
 
「ふふふ、分かりやすい、奈々葉って……自販機のところで部長が……なんだっけ……昨夜の続き? ……しよう……って……」
 
 ――えっ、きゃあっ……会社で!?
 
 セルシオの車内での出来事が再生される。下腹の奥がキュンと熱くなる。耳たぶが熱い。熱を測るように自分の手のひらで頬を包む。
 
「ありがと、自販機、ち、ちょっと言ってくる」
 
「……なーんて」
 
 ――ええっ、誘導尋問……?
 
「美希……ズルい」
 
「奈々葉、恋する乙女の目してるんだもの。それで……?」
 
 美希が白い歯を見せる。
 
 奈々葉はポツリポツリと昨夜の社用車の中での話を始めた。

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