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ダブル不倫

第2章 プロローグ

 慌てた様子で女性店員が様子を見に出て来る。その手にはモップとホウキを手にしている。店員は「何とかしてくれ」と言わんばかりに菜々葉を見ていた。
 
「もう、もういい……もう終わりっ!」
 
 奈々葉は唇で「ごめんなさい」と言いながら、手のひらを合わせ、何度も彼女に頭を下げた。

「オヤジ、さけ、酒、もお一本っ……」
 
 ――もう、部長、酒グセ悪い!
 
「すみません、いえ……も、もう……お会計……お会計お願いします」
 
奈々葉はカウンターの中の店主に手のひらを見せ、顔を左右に振った。
 
「ああ、宮崎?、ミヤザキちゃんっ……分かって、分かってくださいよ。俺の気持ちをさあ……」
 
「ハイ、ハイ……帰りましょ。私、送りますから……」
 
 奈々葉はスマートフォンでタクシーを呼んだ。
 

 
「いいよ……おれ、じぶんで……かえれますから……。おまえは、もうかえれ。めいれいだ。ぶちょうのめ、い、れ、い」
 
「はい、はい。分かりました。里井部長」
 
 里井をタクシーに押し込んだ。奈々葉も一緒に乗り込む。

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