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ダブル不倫

第2章 プロローグ

 タクシーがマンションの前に止まった。奈々葉は高層マンションを見上げた。
 
 ――部長にもなると凄いよ!
 
 里井の部屋は十七階にあった。奈々葉は手のひらで里井のスーツの内ポケットを探り、部屋の鍵を取る。
 
 玄関のドアを開けた。
 
 里井の肩を抱くようにして部屋の中に入る。
 
 里井が離婚したという噂は、誰かから聞いたことがあった。
 
 ――きゃ、汚い。でも、ウワサは本当だったんだ。
 
 ビールの空き缶やコンビニ袋が散乱し、一杯になったゴミ袋が廊下に沿って並べてある。「男やもめにウジが湧く」というどこかで耳にした言葉が奈々葉の頭をよぎった。

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