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男の友情・女の立場

第1章 男の友情

美羽は目の前にいる健太にどんな態度をとっていいか決めかねている。

たしかに健太が悪いわけでもないし、自分にこんな無茶なことを頼んだ卓也の考えにも同意するところもあった。

(これが男の友情?)

と、何度も人の《性と恋愛の倫理》についても考え、その不思議さと奇妙さを感じ、それよりも何よりも憤りが全身にみなぎっていた。


健太はちょっと頭の足りないヤツだが、一人で生かしておくのが怖いほど純粋で、バカなのにこれまで多くの友人を助けている。

美羽の彼氏の卓也も、現在人気のバーを経営していい暮らしをできているのも90%は健太の助けがあったからだ。


そんな健太が失恋をし、うつ病になって死ぬほど落ち込んでいる姿を見て、卓也は美羽に《体を貸すこと》を懇願したのだった。


美羽は最初、そのあまりにも突飛な頼みに対して、とうぜんのように跳ね除けようとしたが、ふだんジョークばかり言っている卓也のめずらしく真剣な態度についに折れてしまった。


美羽は普段立場的には健太よりも《上》であり、自分の彼氏の親友であるにも関わらず命令口調でしゃべるし、説教もする。

ただ、美羽も卓也やその他の友人同様に健太の人間性の素晴らしさは知っていた。


自分の恋愛のパートナーとして健太のような人間を選ぶことはないが、それでもたまに引き込まれそうになることもあった。

健太は猫や犬のような純真さと、常人で考えつかないような言動をする《社会の例外》のような人間だった。


――美羽は照れもあるし、自分の心の置所をどこに持っていけばいいか分からず、怒ったような表情と強い言葉を使うことでなんとか自分自身を保っていられた。

「キスはしないからね!あと、エッチしたからって好きになってもらったら困るから!さっさと始めて!」

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