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男の友情・女の立場

第2章 態度

よくよく考えれば健太も被害者だし、美羽にそんな態度をとられる理由もない。

なぜなら、この状況は健太が頼んだものではなく、卓也と美羽の夫婦間会議によって決められたものなのだ。

健太はいつにも増してキツい口調で喋る美羽を前にして、おどおどするばかりだった。


そんな調子でセックスが始められるものではないことは、美羽も分かっていた。

だからいつまでたっても行為がはじまらない理由は、自分の態度にあることも了解していた。

健太は卓也から今回のことを提案されても、最初から現在までずっと断り続けてきて、強引に今の状況になっている。

美羽はそのことも理解しているのだが、美羽はそれでもキツい態度を取り続けるしかなかった。


その態度こそが卓也に対する「愛の証」であり、身の潔白だった。

自分の彼氏に親友と寝ろと言われたときに、どういう態度をとったらいいか?など、恋愛ハウツー本には書かれていない。

ただ美羽はこの《ミッション》を克服しなくてはならないし、最低でも一回はヤらなくては申し訳が立たない。


「こっち来て!服脱いでよ!」

健太はソファーから立ち上がってベッドにいる美羽のそばまで歩いた。


ラブホの室内は、色気のない白色蛍光灯の照明がフルパワーで点けられ、音楽もかけていない。

そこには《雰囲気》というものがまったくなかったが、その演出は美羽が決めてあえてしたものだった。


――美羽は卓也から今回のことを頼まれて了解したとき、《行為はするが一切の感情を入れないこと》を自分の中で決めていた。

だからセックスも行為を楽しむ部分は排除して「挿入と射精」だけを速やかに、かつ事務的にこなすというプランを用意していた。

しかし、それではことが始まらないことを理解し、少し態度を軟化させるより他なくなった。

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