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堅実メイドの献身

第5章 暎人について

着いたのは、藤井の執務室だ。

「どうぞ、お入りください。」

促されて中に入る。

「失礼致します。」

ー あなたに呼ばれると、緊張するんですが、、、

「まぁ、そう緊張なさらずお掛けください。」

雅の心の中を読んだように藤井に言われる。
机の上には何やら書類が色々と積み上がっていた。

「はい、これ伊東さんの食事です。」

目の前にどんと丼が置かれる。

「どうぞ、召し上がって下さい。」

「あの、食事なら食堂で。」

「いいえ、長くなるのでこちらで召し上がって下さい。」

「わかりました。藤井さんは召し上がらないんですか?」

「私はもう食べました。ですから遠慮なくどうぞ。」

藤井が蓋を開けると、湯気があがる。

「カツ丼、、、。」

「えぇ、カツ丼です。」

ー 犯人の取り調べみたいなんだけど。

「まるで、取り調べですね。」

「おや、気づいて下さいました?」

「え、本当に取り調べなんですか。」

ー まさか、暎人様とのことが、、、。

「まさか、ほんのジョークですよ。」

「ジョーク、、、。」

ー 心臓に悪いジョークだな。

とにかく、暎人とのことが知られてしまった訳ではないようだ。ほっと胸をなでおろす。

「遅くなってしまったのですが、暎人様のお付きになるにあたって、色々と説明させていただかねばならないことがありまして。」

「なるほど。」

だからと言って、食べながら聞くのは気が引ける。

「あの、食事はあとで結構なので、先に説明をどうぞなさって下さい。」

「もちろんです。これはジョークですから。」

手が込みすぎて、笑っていいのかわからない。

藤井は雅のとなりに掛けると話し始めた。

「それでは説明、というか、今日中にこれ全部覚えて下さい。」

カツ丼を端に押しやり、机の上に山積みになってる書類をぐいっと雅の前に持ってくる。

「こ、これは、、いったい。」

「暎人様に関する情報一覧です。」

「これ全部ですか?」

「そう、これ全部です。」

「今日中に?」

「えぇ、今日中に。」

「、、、かしこまりました。」

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