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私、普通の恋愛は無理なんです。

第3章 セフレ候補

 ふう、ふう……。
 
 里井部長はコーヒーカップの湯気を払ってからズズズと奈々葉の淹れた二度ほどコーヒーをすすった。香ばしい淹れたてのコーヒーのかおりが事務所の中に広がる。
 
「ああ……あの……コーヒー凄く安いのですけど……」
 
 自信なさげに奈々葉が部長に尋ねた。
 
 部長は「うん……」と頷くと、ゴクリと喉を鳴らしてから言った。
 
「美味かったよ。俺が飲んだ中で一番……また、いつか淹れてくれっか」と、部長の浅い小麦色の肌に赤みが指した。白い歯を見せた。部長のこんな顔、私には見せたことがなかった。
 
「ハイ! 次はもう少しいいのを……」
 
 部長がカップのコーヒーを全部飲み干し、小さな息を吐いた。
 
「いや、これ……今日の……安いのでいいよ。宮崎、お前が淹れるんだったらさ」
 
 電話の呼び出し音が短く鳴った。誰かが受話器を取った。それを合図に止まっていた時間が動き出す。

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