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私、普通の恋愛は無理なんです。

第3章 セフレ候補

 どさくさに紛れて部長室に入った。部長室はシステム営業部の一番奥の部屋だ。私はノックもせずに漆塗りの重々しい扉を開ける。
 
「何か用か? 坂村……」
 
 彼の目が冷たく私を見た。それはいつもと変わらなかった。
 
「ビローン……」
 
「なんだよ。ビローンって……」
 
 部長は怪訝な目で私を見たあと、頬がだらしなく緩んだ。
 
「ここ……鼻の下……」
 
 私は自分の鼻と唇の間を指差した。部長の横に立つ。普段は社員が入れないスペースだ。

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