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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第3章 君はやっぱり変でした



「楽しかったねー」

目の前で呑気に笑っているひぃくん。

きっと私の胸を掴んだ事なんて気付いていないのだ。
なんて失礼なやつ……。

「おいで、花音」

先にプールから上がったひぃくんが、私に手を差し伸べて微笑む。
私は黙ってその手を掴むと、ひぃくんに引っ張り上げてもらってプールから上がった。

「楽しかったねー、もう一回乗る?」
「絶対に嫌。ひぃくん一人で行けば」
「花音が乗らないなら行かないよー」

ニコニコと笑顔で話すひぃくんの横を、私は力の抜けた身体でトボトボと歩く。

何だか凄く疲れた……。
絶対にひぃくんのせい。

だいたい何でひぃくんがここにいるの?

隣にいるひぃくんをチラリと見上げると、ニッコリ微笑んだひぃくんが口を開いた。

「さっきはごめんね、わざとじゃないよ」

そう言って小首を傾げてフニャっと笑うひぃくん。

えっ……?
気付いて……た……
気付いてたんだ……!

さっきは失礼なやつ、とか思ってしまったけど……
できれば気付かないで欲しかった。
最悪……。

泣きそうになって下を俯くと、ひぃくんが私の顔を覗き込んだ。

「大丈夫だよ、柔らかくて気持ちよかったから」

そう言ってニッコリ微笑むひぃくん。

意味がわからない……。
何が大丈夫なのよ。
私が気にしているのは柔らかさではない。

「ひぃくんのバカ!」

もう恥ずかしさやら怒りやらで、何だかわからなくなってしまった私は、ひぃくんに暴言を吐くとそのまま泣き出した。

「泣かないで、花音。大丈夫だよー」

そう言って私の頭を撫でながら涙を拭うひぃくん。

何が大丈夫なのよ……。
私が気にしているのは柔らかさじゃないんだよ?
凄く恥ずかしかったんだから。

きっとひぃくんには伝わらないんだろうな……。

そう思った私は、泣いている自分がとても虚しく思えたーー。

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