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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第5章 そんな君が気になります



私は赤くなった顔で勢いよく声を出した。

「ちっ、違う!違うもんっ!!」

なんて事だ……。
ひ、ひぃくんを好きだなんて……
そんな事あるわけない。

違う、絶対に違う。

カーッと熱くなる顔に、自分でも動揺が隠せない。

確かにひぃくんの事は好き。
だけど、恋とかじゃない。
幼なじみとして好きなだけ。

大体、さっきだってひぃくんのせいで酷い目に合ったのだ。
そんな人を好きになる訳がない。

そう自分に言い聞かせる。

「かのーん!」

ーーー!?

いきなり飛び付いてきたひぃくんに、私は支えきれずに後ろへ傾く。

えっ……ここ、ベンチ。
落ちるっ。
私はギュッと目を閉じて衝撃に備えた。

あ、あれ……?
痛くない。

恐る恐る目を開くと、目の前にはひぃくんらしき胸板が。

「おい、ふざけんな響」

背後から聞こえるお兄ちゃんの声。

私はお兄ちゃんを下敷きにして倒れていたのだ。
きっと私を庇ってくれたお兄ちゃん。

上にはひぃくん、下にはお兄ちゃん。
笑えない……。
何このサンドイッチ。

「早く退け、重い」

ごめんなさい、お兄ちゃん。
私動けません。
苦しくて声すら出せません。

全く退く気のないひぃくんは、私の上で「かのーん。かのーん」と嬉しそうな声を出している。

く……苦しい。

苦しさに少し顔を動かすと、中庭にいる生徒達が視界に映る。

三人で抱き合ったまま転がる私達。
そんな私達を見て驚く人、クスクスと笑う人……

また私は皆の前で醜態を晒《さら》してしまったのだ。

……もう嫌。
なんでいつもひぃくんてこうなの。

絶対にひぃくんを好きだなんて有り得ないよ……。

私の上で嬉しそうな声を出しながら揺れているひぃくん。
私はひぃくんに抱かれながら、苦しさに顔を歪めた。

お願い、揺れないで……。
苦しいし……恥ずかしい。

その後、お兄ちゃんが無理矢理ひぃくんを退けるまでの間、私はずっと潰れた蛙のような呻き声を上げていたーー。

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