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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第9章 君は変な王子様



ニコニコと微笑むひぃくんの隣で、ジャージの上着を羽織わされた私はトボトボと歩いていた。

さっきは本当に酷い目に遭った……。

またひぃくんのせいで、とんだ晒《さら》し者になってしまった私。
ぶつけた後頭部はまだズキズキと痛み、そっと触れてみると小さなコブになっている。

誤解も解けて幸せそうに微笑むひぃくんの横で、私は小さくため息を吐くとひぃくんをマジマジと見た。

さっきは気付かなかったけど……

「ひぃくん、その格好……何だか王子様みたいだね」

青いロングジャケットには綺麗な刺繍が施され、袖にはヒラヒラとした白い布が付いている。

これが中世ヨーロッパの衣装なのだろうか……。

私を見てフニャッと笑うひぃくん。

「格好いいね。ひぃくん似合ってる」
「本当?良かったー」

私のその言葉に、とても嬉しそうに微笑むひぃくん。

何だか急に恥ずかしくなった私は、顔を俯けるとジャージの袖で口元をおさえた。

ひぃくんから借りたジャージは、やっぱりひぃくんの香りがする。

まるでひぃくんに包まれているみたい……。

そんな事を考えながら、鼻から空気を吸い込む私。
変態みたい……。

大きすぎるジャージにスッポリと隠れている両手を眺めた私は、パッと顔を上げると口を開いた。

「ひぃくん、お昼どこで食べるの?」
「翔《かける》のとこだよー」
「えっ? お兄ちゃんのところ? ……いいの?」
「うん」

絶対に来るなと言っていたけど……
本当にいいのだろうか……?

ニコニコと微笑むひぃくんを見て、少し不安になる私。

「面白いのが見れるよー」

そう言ってクスクスと笑うひぃくん。

面白いのが見れるって何だろう……。

ニコニコと楽しそうに微笑むひぃくんの横顔を見て、不安より好奇心の方が強くなってきた私。

「楽しみだなー」

笑顔でひぃくんを見上げると、ひぃくんはニッコリと微笑んで私の手を取った。

そのままジャージの上から優しく手を握るひぃくん。
私は繋がれた手にキュッと力を込めると、ニコニコと微笑みながら前を向いて歩いた。


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