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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第9章 君は変な王子様



お兄ちゃんの教室の前まで来た私は、扉の前に飾られた看板を見て首を傾げた。

【男女逆転縁日】

……男女逆転て何?
首を傾げる私を見て、クスリと笑うひぃくん。

「楽しみだねー」

ニコニコと微笑むひぃくんは、そう言うと教室の扉を開けた。

ーーーガラッ

「わぁ……! 本当にお祭りみたいだねぇ」

沢山の提灯《ちょうちん》で飾られた教室は、まるで本物の縁日のようだった。

スーパーボールすくいや輪投げなど、沢山の出店が並んでいる。
私のすぐ目の前には、金魚すくいまである。

本物の金魚がいるのだろうか……?
近づいて覗いてみると、そこにはキラキラと光る金魚が浮いていた。

「わぁっ! 可愛いっ! ひぃくん、これ取って!」

ひぃくんの腕を引っ張って興奮気味にそう話す。

水槽に浮いていたのは、電池でキラキラと光る玩具の金魚だった。
昼食を食べに来たというのに、すっかり金魚に夢中になってしまった私。

そんな私を見て、クスリと笑ったひぃくんは水槽の前にしゃがむと振り返った。

「何色がいいの?」
「ピンクっ!ピンクがいいっ!」

ひぃくんの隣にしゃがむと、水槽の中の金魚を見つめながらそう伝える。

「取れるかなー」
「ーー絶対に取れるようにできてるから大丈夫だよ」

ひぃくんの言葉に、水槽の前に座っている店番の人が声を掛けてきた。

あれ……?
なんか違和感が……。

髭を生やした短髪のお兄さんは、何だかやたらと可愛らしい。
それに、さっきの声……
女の人の声だった様な……?

「良かったねー、花音。絶対に取れるってよ」
「……うんっ!」

店番の人をジッと見つめていた私は、慌ててひぃくんを見ると笑顔で頷いた。

その後、アッサリと金魚を取ってくれたひぃくん。
本当に誰でも取れるようにできていたみたい。

掌にコロンと乗った金魚を見つめ、私はニコニコと微笑んだ。

「ひぃくん、ありがとう!」
「どういたしましてー」

フニャッと笑ったひぃくんは、そう言うと私の頭を優しく撫でる。

「あっ……。ひぃくん、お兄ちゃんは?」

すっかり忘れていたお兄ちゃん。
一体何処にいるのだろう?


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